「何言ってるかわからない」から逃げられなかった案件
医療系のYouTube動画編集をやっていると、映像そのものより先に「音」でつまずくことがある。自分が最初に本気で困ったのは、ノイズとかホワイトノイズの話じゃなくて、講師の滑舌そのものが悪くて何を言っているか聞き取れないという、もっと根本的なやつだった。
編集ソフトで音量を上げても、こもった声がただ大きくなるだけで逆に聞きづらくなる。字幕をつけようにも、何度聞いても聞き取れない箇所があって、正直「これは編集の範囲を超えてるんじゃないか」と何度も思った。でも納品期限は待ってくれないし、クライアントに「聞き取れないので撮り直してください」とも言いにくい。結局、イコライザーで声の帯域を持ち上げたり、ノイズ除去で余計な環境音を削ったりして、聞き取れるギリギリのラインまで持っていくしかなかった。
今思えば、あのとき一番つらかったのは技術的な難しさよりも「これで本当に合ってるのか」という不安の方だったかもしれない。映像のカットやテロップと違って、音は「正解が見た目でわからない」から、自分の判断に自信が持てなかった。何度も同じ箇所を聞き返して、耳が麻痺してくる感覚になりながら作業していたのを覚えている。
音声調整は「ノイズ除去」と「音量バランス」の2軸で考える
この経験から自分なりに整理できたのは、動画編集の音声調整って実は2つの別々の作業だということ。
1つ目は「ノイズ除去」。マイクの機材ノイズ、空調の音、部屋の反響、そして自分がぶつかった滑舌のこもりみたいな「聞き取りにくさ」そのものを取り除く作業。2つ目は「音量バランス」。ナレーション・BGM・効果音、それぞれの音量差を整えて、視聴者が違和感なく聞き続けられる状態にする作業。
この2つを分けて考えられるようになるまで、自分は全部まとめて「音量を上げ下げすること」だと思っていた。だから声がこもっているのに音量だけ上げて余計に聞きづらくする、みたいな遠回りをしていた。まずノイズ除去で聞き取りやすさの土台を作ってから、音量バランスを整える。この順番を意識するだけで作業効率がかなり変わる。
Premiere Proでの具体的なやり方
ノイズ除去はEssential Soundパネルから
Premiere Proには「Essential Sound」パネルという機能があって、音声クリップを選んで「ダイアログ」タグをつけると、ノイズ除去・明瞭度・迫力といったスライダーが出てくる。滑舌がこもっている音源には「明瞭度」を上げると輪郭がはっきりしてくることが多い。ただしかけすぎると音が不自然に硬くなるので、少しずつ様子を見ながら調整するのがコツだ。
それでもどうしても聞き取れない場合は、イコライザーで人の声が乗りやすい2kHz〜4kHz帯域を軽く持ち上げると、こもった印象がかなり和らぐ。逆に低音域(200Hz以下)を少し削ると、こもり感の原因になっている余計な低音が消えてすっきりする。
音量バランスは「基準の数値」を決めておく
自分が一番苦労したのは、実はここだった。「どれくらいの音量が正解なのか」がまったくわからなくて、毎回感覚で調整していたので、動画ごとに音量差がバラバラになっていた。ある回はナレーションが小さすぎて聞きづらく、別の回はBGMがうるさくてナレーションが埋もれる。クライアントに指摘されたことはなかったが、自分の中で「これでいいのか」という不安がずっと残っていた。
そこから調べまくって、今は自分の中で基準の数値を決めている。ナレーションを基準の0dBとしたときに、BGMは-25dB前後、効果音は-15dB前後まで下げる、というルールだ。ナレーションそのものも録音状態によってはさらに-5dB前後まで下げて音割れを防ぐこともある。数値を決めてからは、毎回感覚で悩む時間がなくなって、作業スピードがかなり上がった。
音量チェックはヘッドホンだけで終わらせない
音量バランスをある程度整えたら、必ず環境を変えて聞き直すようにしている。ヘッドホンで聞いたときはちょうど良く感じても、スマホのスピーカーやテレビで再生すると、低音がやせて声が急に頼りなく聞こえたり、逆にBGMだけが浮いて聞こえたりすることがよくある。医療系の動画は視聴者が移動中や作業中に「ながら見」することも多いので、スピーカー再生での聞こえ方を基準に最終チェックするようにしてから、仕上がりの安定感がかなり変わった。
具体的には、ヘッドホンで細かいノイズや音の重なりを確認したあと、パソコン内蔵スピーカーとスマホスピーカーの2つで通し再生する。この2段階チェックを挟むだけで、「ヘッドホンでは気づかなかったけど実は声が小さい」みたいな見落としをかなり減らせる。
よくある質問
Q. ノイズ除去プラグインは有料のものを買うべき?
最初のうちはPremiere Pro標準のEssential Soundパネルとイコライザーだけで十分対応できることが多い。それでも取りきれない強いノイズが頻繁に発生するようなら、有料のノイズ除去プラグインを検討する、という順番でいいと思う。いきなり高い機材やプラグインに投資する必要はない。
Q. 音量の基準値は必ずこの数値にすべき?
自分が今使っている「ナレーション0dB・BGM-25dB・効果音-15dB」はあくまで自分の案件で調べて落ち着いた数値であって、絶対的な正解ではない。収録環境やジャンルによって最適な数値は変わるので、まずは自分なりの基準を1つ決めて、案件をこなしながら微調整していくのがおすすめだ。基準がないまま毎回感覚で調整するより、基準を決めてからのほうが圧倒的に迷う時間が減る。
やりがちなミス
- ノイズ除去をかけすぎて、声がロボットっぽく不自然になる
- BGMの音量をナレーションと同じくらいの感覚で調整してしまい、声が埋もれる
- ヘッドホンだけで確認して、スピーカーで聞くと音量バランスが崩れているのに気づかない
- 動画ごとに音量基準がバラバラになり、シリーズ全体で聞こえ方が統一されない
- 聞き取りにくさの原因が「ノイズ」なのか「滑舌・話し方」なのかを切り分けずに、とりあえずノイズ除去だけ強めにかけて満足してしまう
シーン別の音量設定早見表
| 音の種類 | 基準からの音量差 | ポイント |
|---|---|---|
| ナレーション | 0dB(基準) | 録音が小さい場合は-5dB前後まで下げて音割れ防止 |
| BGM | -25dB前後 | ナレーションの邪魔をしない「気配」レベルまで下げる |
| 効果音 | -15dB前後 | 強調したい場面だけ一時的に上げてもOK |
| 環境音・ノイズ | 可能な限り除去 | Essential Soundパネルとイコライザーを併用 |
まとめ
- 音声調整は「ノイズ除去」と「音量バランス」の2つの作業に分けて考える
- 聞き取りにくさは、まずEssential Soundパネルの明瞭度調整とイコライザーで対処する
- 音量バランスは感覚に頼らず、自分なりの基準数値(ナレーション0dB・BGM-25dB・効果音-15dB)を決めておくと安定する
- クライアントから指摘がなくても、視聴者が違和感なく聞ける状態を目指す価値はある
音声まわりが整うと、テロップやBGM選びといった他の作業のクオリティもグッと安定してくる。あわせて読みたい記事も参考にしてほしい。


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